#topicpath * 他のBSDユーザのためのOpenBSD管理入門 [#gbf9e17f] RIGHT:EBUG 第63回会合 ~ 2017年 11月18日、長岡市 ながおか市民センター ~ 川俣吉広、kaw@on.rim.or.jp OpenBSDの設定や管理について、他のBSD系OSからみて特徴的と思われる点をまとめてみる。 ---- #contents **ストレージ、ファイルシステム関連 [#lde54a06] ディスク関連の設定はインストール時に行われるが、運用開始後に変更や増設をする時に、以下のノウハウを把握しておくと有用: -OpenBSDでは、[[fdisk>https://man.openbsd.org/fdisk]]パーティションと[[disklabel>https://man.openbsd.org/disklabel]]パーティションが個別に存在する。 --fdiskパーティションとdisklabelパーティションの設定は連動しない。fdiskパーティションのOpenBSD領域とdisklabelパーティションのOpenBSD boundaryはセクタ単位で合わせておく必要がある(インストール時には自動で合わせられる。手動で合わせる場合はdisklabel -Eのbサブコマンドを使用する)。 --disklabel -Eコマンドによるパーティション操作は、OpenBSD boundaryの範囲内でのみ可能。 -ディスクパーティションは例えば ''/dev/sd0a'' のように命名される --デバイス ---[[wd>https://man.openbsd.org/wd]] : IDE接続のハードディスク ---[[sd>https://man.openbsd.org/sd]] : SCSI/SATA/SD/USBメモリ など ---[[cd>https://man.openbsd.org/cd]] : CD/DVD などの光学メディア --0..9 : デバイスのユニット番号 --a..p : パーティション ---a:(通常はルート) ---b:swap ---c:メディア全体 ---iからkくらいまで: 慣習的にFAT/NTFS/EXTFSなどで使われることが多い ---それ以外については特に決まっていない -デバイス名は sd0a というような従来の命名法に加えて、 デバイス毎に生成される固有な値である DUID (disklabel unique ID) を使うこともできる。 --表記としては、''/dev/sd0a'' の替わりに ''fbab11c399a0565f.a'' などとなる。 --生成されたDUIDはdisklabelコマンドやsysctl hw.disknamesの表示から確認できる。 --インストール時に生成される [[/etc/fstab>https://man.openbsd.org/fstab]] ではDUID表記が用いられる。 -ファイルシステムのレイアウトについては、[[オンラインマニュアルのhier(7)>https://man.openbsd.org/hier]]を参照のこと。 **ネットワーク [#q2ac4220] -ネットワークの基本的な設定は、/etc 内にある以下のファイルによって行われる。 :[[myname>https://man.openbsd.org/myname]]|ホスト名のFQDN :[[mygate>https://man.openbsd.org/mygate]]|デフォルトゲートウェイ :[[hostname.'''if'''>https://man.openbsd.org/hostname.if]]|ネットワークインターフェースの設定~ '''if''' の部分には設定対象となる[[em0>https://man.openbsd.org/em]]などのインターフェース名を表記する。~ [[VLAN>https://man.openbsd.org/vlan]]やブリッジ、pppoeなどの仮想インターフェースも全てこの方法で設定する。~ 基本的にはIPアドレスやネットマスクなど、 [[ifconfig>https://man.openbsd.org/ifconfig]]コマンドの引数となるものを記述する。~ 無線LAN関連のSSIDや暗号化キーなどもifconfigで設定するため、記述はこのファイルで行う。wpa_supplicantのような外部プログラムは使用しない。 :[[resolv.conf>https://man.openbsd.org/resolv.conf]]|名前解決の設定 :[[hosts>https://man.openbsd.org/hosts]]|既知のホスト名とIPアドレスの対応表 :[[pf.conf>https://man.openbsd.org/pf.conf]]|パケットのフィルタリング、アドレス変換、帯域制御などの設定 -上記のファイルはインストール時に生成されるが、 その後設定変更等を行う場合はファイル編集後、以下の操作で変更を反映させる: --mygate, myname ... OSの再起動 --hostname.'''if''' --myname, mygate, hostname.'''if''' # sh /etc/netstart if ... ネットワークインターフェースifを再初期化する場合 # sh /etc/netstart ... 全てのネットワークインターフェースを再初期化する場合 --resolv.conf, hosts ... 即時反映 --pf.conf # pfctl -f /etc/pf.conf >勿論、設定ファイルを編集後OSを再起動してもよい。 **アカウント管理 [#qae37523] -ユーザの管理には[[user>https://man.openbsd.org/user]]コマンドを使用する。 --ユーザの追加は[[adduser>https://man.openbsd.org/adduser]]コマンドを使用してインタラクティブに行うこともできる。~ adduserを使った場合、/etc/skel以下にあるドットファイルが追加されたユーザのホームディレクトリにコピーされる。 --[[vipw>https://man.openbsd.org/vipw]]コマンドも使用可。 -グループの管理は[[/etc/group>https://man.openbsd.org/group.5]]を直接編集するか、[[groupadd>https://man.openbsd.org/groupadd]], [[groupdel>https://man.openbsd.org/groupdel]]などのコマンドを使用する。 -他のユーザ権限でコマンドを実行したい場合は、sudoの代替実装である[[doas>https://man.openbsd.org/doas]]を使用する。 例えば以下のように[[/etc/doas.conf>https://man.openbsd.org//etc/doas.conf]]を記述すると、wheelグループに属しているユーザに対してrootでの管理業務を許可することができる: permit persist :wheel (persistはdoasの実行が許可された後、暫くはパスワード力なしでdoasを再実行できるようにするためのオプション) persistはdoasの実行が許可された後、暫くはパスワード力なしでdoasを再実行できるようにするためのオプション。 **パッケージ管理 [#d4f2c783] サードパーティのソフトウェアは[[ports>https://man.openbsd.org/ports]]/[[packages>https://man.openbsd.org/packages]]を用いて導入することができる。 -packagesを利用してすでに用意されているビルド済みパッケージを管理するには、[[pkg_add>https://man.openbsd.org/pkg_add]], [[pkg_delete>https://man.openbsd.org/pkg_delete]], [[pkg_info>https://man.openbsd.org/pkg_info]] などのコマンドを使用する。 インストール元のURLは[[/etc/installurl>https://man.openbsd.org/installurl]]ファイルで指定されている。~ インストール元を変更したい場合は、https://www.openbsd.org/ftp.htmlを参照し、このファイルを書き換える。~ 以下のように、環境変数PKG_PATHにて指定することも可能: # export PKG_PATH=http://ftp.jaist.ac.jp/pub/OpenBSD/7.0/packages/amd64/ # pkg_add rsync -portsは、以下の手順で利用できる --OpenBSDの配布サイトより ports.tar.gz をダウンロードし /usr 以下に展開 --[[cvs>https://man.openbsd.org/cvs]]を用いてportsツリーを最新の状に更新 --cvsを用いてportsツリーを[[最新の状に更新>https://man.openbsd.org/cvs]] --インストールしたいソフトウェアのディレクトリに移った後、make install を実行 >ソフトウェアのビルドが終わると、/usr/ports/packages/arch名/all 以下にそのソフトウェアのパッケージが作成され、さらに pkg_add が行われる。 -ports/packagesを用いて導入したソフトウェアは、/usr/local以下に配置される。 --ただし、設定ファイルは/etc以下に配置される。 --パッケージの管理情報が/var/db/pkg以下に記録される。 --pkg_add実行時に、そのソフトウェアの設定などについての留意事項が表示される。これは /var/db/pkg/パッケージ名/+DISPLAY ファイルの内容である。 --インストール後の設定作業などは、/usr/local/share/doc/pkg-readmes以下に記述がある場合もあり、こちらも要参照。 **デーモンやサービスの設定 [#k41717fe] -OpenBSDでは、各種設定ファイルはX Window関連、ports/packagesから導入したものを含め、すべて /etc 以下に配置される。 -/etc/examples 以下に設定ファイルのサンプルがある場合は、それを/etcにコピー、編集して使用することができる。 -起動時の初期化スクリプトは /etc/rc。 --ユーザが初期化動作を追加したい場合は [[/etc/rc.local>https://man.openbsd.org//rc.local]] ファイルを作成し、その中にシェルスクリプトとして記述する。 --[[/etc/rc.shutdown>https://man.openbsd.org/rc.shutdown]]ファイルを作成すると、シャットダウン時にその内容を実行する -デーモンやサービスの初期値は /etc/rc.conf に記述されている。このファイルをユーザが編集することは推奨されていない。~ 初期値を変更したい場合は [[/etc/rc.conf.local>https://man.openbsd.org/rc.conf.local]] に変更内容を記述する。 -デーモンやサービスの管理は [[rcctl>https://man.openbsd.org/rcctl]] を用いる。rcctlを用いると /etc/rc.conf.local を直接編集することなしに記述内容の変更を行うことができる。~ rcctlの実行例: # rcctl disable sndiod ... sndiod(サウンドデーモン)を無効化する ... 次回ブート時以降、起動されない (/etc/rc.conf.localに「sndiod=NO」という行が追加される) # rcctl stop sndiod ... 現在動いているsndiodを停止する -定時処理としては [[/etc/daily>https://man.openbsd.org/daily]], [[/etc/weekly>https://man.openbsd.org/weekly]], [[/etc/monthly>https://man.openbsd.org/monthly]] がある。 これらは、実行結果が root 宛にメールで通知される。 -[[cron>https://man.openbsd.org/cron]]デーモンの管理は[[crontab>https://man.openbsd.org/crontab]]ユティリティを使用して行う。 -/etc/firmware 以下にはデバイス初期化に必要なファームウェアバイナリのうち、OSに同梱可能なものが置かれている(ファームウェアが必要なデバイスとしては、グラフィクス、無線LAN、カメラなどのデバイスが多い)。 --同梱不可なファームウェアは http://firmware.openbsd.org/firmware/ からダウンロード・インストールする必要がある。 --[[fw_update>https://man.openbsd.org/fw_update]] を使用すると、ファームウェアの必要なデバイスの検出、ファームウェアのダウンロードとインストールを自動で行うことができる。 -カーネルのパラメータを変更してパフォーマンスの改善を行うことができる。 --[[UKC>https://man.openbsd.org/boot_config]] (User Kernel Config) あるいは [[config>https://man.openbsd.org/config]] ユティリティによる起動時での変更 --[[sysctl>https://man.openbsd.org/sysctl]] による on the fly での変更(と参照) ~ ... 変更を永続化するには [[/etc/sysctl.conf>https://man.openbsd.org/sysctl.conf]] に記述する。 **アップデート作業 [#wb6147ef] OpenBSDは概ね半年に一回バージョンアップが行われている。バージョンが更新されるとバージョン番号が0.1増える。 -OSの修正情報は[[最新バージョンとその一つ前まで提供される>https://www.openbsd.org/errata.html]]。 従って、あるバージョンのサポート期間は概ね一年間。 -現行リリースのうち、i386, amd64, arm64プラットフォームについては、バイナリパッチが提供される。このパッチは [[syspatch>https://man.openbsd.org/syspatch]] ユティリティを用いて適用する。 -修正の適用をバイナリパッチではなく、ソースレベルで行う場合は概ね以下の手順で行う: --ソースを/usr/src以下に展開 (Xの場合は/usr/xenocara、portsの場合は/usr/ports) --[[cvs>https://man.openbsd.org/cvs]]を用いてソースを最新の状に更新 --cvsを用いてソースを[[最新の状に更新>https://man.openbsd.org/cvs]] --[[修正情報の手順を参照>https://www.openbsd.org/errata62.html]]して、ビルド・インストールを行う。 -OSのバージョンアップを行う場合は[[sysupgrade>https://man.openbsd.org/sysupgrade]]コマンドで行う。~ なお、バージョン毎に固有のアップグレード手順が要な場合があるので、[[FAQページ>https://www.openbsd.org/faq/index.html]]の「Upgrading to X.X」のページを参照し、作業内容を確認する(X.Xはバージョン番号)。 なお、バージョン毎に固有のアップグレード手順が要な場合があるので、[[FAQページ>https://www.openbsd.org/faq/index.html]]の「Upgrading to X.X」のページを参照し、作業内容を確認する(X.Xはアップデート後のバージョン番号)。 **情報源 [#e3f2dfd4] -Online Manual Page ([[Web>https://man.openbsd.org]]) >'''''Again, PLEASE READ THE MANUAL PAGES.&br;Our developers have spent countless hours improving them so that they are clear and precise.'''''&br;... /var/mail/root --[[afterboot(8)>https://man.openbsd.org/afterboot]] - things to check after the first complete boot -公式: [[FAQ>https://www.openbsd.org/faq/index.html]] - FreeBSD Handbook や The NetBSD Guide に相当 -管理・設定についての概説 - [[OpenBSD Jumpstart>http://www.openbsdjumpstart.org/]] -ニュースサイト - [[OpenBSD Journal>http://undeadly.org/]] **更新履歴 [#d1990875] -2022/3/10 - 現行のOpenBSD 7.0に合わせ、修正。 ---- #topicpath